今の世の中、寿司は回転寿司が流行しているといってもなかなか私のような庶民にはあまり口にすることのない食べ物です。特に昔ながらの対面のカウンター形態の寿司屋は私の日常にはほとんど関係してきません。
ところで、
なんで「寿司屋とバーテンダー」なのか、、、
もうお気ずきの方は多いと思います。。。
私は毎日通勤途中に寿司屋の前を通ります。
ガラス張りで中の様子が伺えるお店です。
寿司屋も早い時間はやはり暇で一人寂しそうにカウンター内に立っている職人さんを良く見かけます。
また、あるときはお客様が1人と職人さんが1人で何やら話し込んでいる様子も見た事があります。
その時何か変な違和感を覚えました。
ハっと思いました。寿司屋もバーテンダーと同じスタイルなのです。
なかなか対面式のスタイルは飲み屋以外は考えが及びませんでしたが、
ここ日本の伝統的な食べ物のお店があったのです。
私はなんだか嬉しくなりました。
しかし、それから出勤時間が変わった事などありすっかりこの事を忘れていました。
先日、2年ぶりぐらいに対面式のしっかりした寿司屋へ行く機会がありました。
もちろん私が望んで行ったわけではありません。
回転寿司ではない寿司屋へ行くときは情けないですがどなたかに連れて行って頂きます。
それも何かの縁でした。
連れて行って頂いた方が、私の元上司で現役のバーテンダーでした。
場所は都内のあるお店でした。時刻は終電間近の23時半ごろ。
店内はかなり混雑しており、私たちはカウンター席に通されました。
20席ほどのカウンター席の前には寿司ネタが入ったガラスケースが設置されており、
その後ろで元気の良い寿司職人が3人、忙しそうに声を張り上げながら動き回っていました。
まずは瓶ビールを注文しました。
それから少しして目の前の若い職人が威勢良く声を掛けてきました。
「何か握りましょうか?」
元上司はバーテンダーに意地悪な注文をするように、
「何か刺身を3種類。」
そして出てきたのが鮪、イカ、光り物(忘れてしまいました)。
職人はカウンターの前の少し高くなった段差の部分に刺身三種類が乗ったお皿を置きました。
なるほど、ちょうどお客は食べやすく、職人からは提供しやすくなっており良くできているなと変な所で感心しました。
元上司はまずは刺し猪口に醤油を入れました。
ここで独り言のように、しかし、なかなか聞こえる声で「醤油の質がいまいちだ」と呟きました。
私としては勘弁して欲しいです。
それは目の前の職人に聞こえたかどうかはわかりませんがとにかく何も問題は起こりませんでした。
刺身をつつきながら、元上司は自分に何か食いたい物はあるかと質問してくれました。
私は情けないですが寿司自体から離れてしまっていたので何も思いつきません。
そう答えると、元上司は職人に「何か踊りでいけるものはあるか?」と質問しました。
職人はすぐに海老が今日は良いですよと勧めてきました。
その海老が握りで出てきました。
「元気ない海老だなぁ」
また、上司は困ったコメントをしました。
それも職人は聞こえたか聞こえてないかはわかりませんが何も問題は起こりませんでした。
元上司は何を注文しようかという風に周りを見回しており、そこへ職人が声を掛けてきました。
「これなんかどうです?蛍イカです。」
「んーイカはなぁー。あれは何?」
「鮑です。」
「よし、それで行こう。」
それから、上司はホタテを握りで注文しました。
ホタテは貝殻が付いている状態から調理してくれたので嬉しいですね。
そして、貝柱を握りで使い、残ったヒモの部分を焼きましょうかと提案してくれました。
カウンター席からは寿司ネタ、職人の包丁さばき、言動、などすべて見る事ができます。
見ていておもしろいですね。
また、職人さんは今日は鳥貝が良いんですと言いながら無料で握ってくれました。
そして、鳥貝はドコドコで養殖ができるようになっていつでも旨い状態で食えるといったウンチクまで話してくれました。
私はやっぱり似ているなと1人で感心していました。
突然、元上司は帰るぞと言いさっさとお勘定を済ましてしまいました。
職人さんがまだホタテを焼いていますがいかがしますか、と声を掛けてくれましたがお店を後にしてしまいました。
彼としては遅かったようです。職人さんは少し残念そうな顔をしていました。
申し訳ないですが私はどうしようもありません。寿司屋も大変ですね。
今日の一言
為せば成る為さねばならぬ成る業を成りぬと捨つる人のはかなき
武田信玄

